新型コロナウイルスに対するワクチン接種も進んできている状況ですが、まだまだその影響は落ち着いてきておらず、自粛要請は続いています。自粛によりデスクワークが多くなり腰痛など体の痛みが出やすくなってきています。
今回は、腰痛への対処に関する信念を変えるようなキャンペーンをした効果についての論文を紹介します。

「腰痛に対する考え方と、腰痛による能力障害を変えるために行われた、集団を対象とした研究」

この研究の目的は、腰痛についての考え方を変え、医療管理に影響を与え、能力障害を減らし補償の費用を削減するようにデザインされた、州全体を対象とした公衆衛生的な介入の有効性を評価することです。方法は、オーストラリアの2つの州、ビクトリア州とニューサウスウェールズ州の労働者を対象として、2年から2年半のキャンペーンの前後での電話調査での腰痛に対する考え方に関する質問票への回答、および、対照群として隣接する州の一般開業医への郵便調査も行いました。また請求書による医療費を調査しました。キャンペーンは、ゴールデンタイムに放映されるテレビコマーシャルを通じて、アクティブな運動を続け、長期間休まず、仕事を続けることに焦点を絞った明確なアドバイスを提供しました。その中では、医療専門家、腰痛を克服したスポーツやテレビのパーソナリティによる対話があり、また、ラジオや看板広告、セミナー、職場訪問、宣伝記事によっても伝えられました。さらに、医師は補償の対象となる腰痛のある従業員の管理に関するエビデンスに基づくガイドラインを受け取りました。結果は、キャンペーン期間で、腰痛に関する考え方はより肯定的になりました。これは医師の中でも改善されました。また、身体活動に関する恐怖回避傾向も改善されました。キャンペーン期間中、腰痛の請求件数、補償日数、および腰痛の請求に対する医療費の支払いは明らかに減少しました。これらから、腰痛に関する前向きなメッセージを提供する戦略は、腰痛に関する考え方を改善し、痛みによる身体活動の回避を防ぐことで、医療管理に影響を与え、腰痛に関連する障害と労働者の補償費用を削減することがわかりました。

『Population based intervention to change back pain beliefs and disability: three part evaluation』
Buchbinder R, Jolley D, Wyatt M : BMJ ;322:1516-20, 2001.